徳田秋声のことば

河出書房様が出版された「日本文学全集9 徳田秋声集」には、付録として「●徳田秋声のことば 人生の光と影」と題された、秋声の本から抜粋された台詞などが掲載された大きなしおりがついてきます。
以下に、その全文を掲載しております。本を読む時間無い方など、読書が苦手だけど徳田秋声についてもっと知りたい方など。どうぞご活用下さい。私も、個人的に好きな文を掲載しようかと思ったのですが、自然描写が好きなせいもあり、私のフェチシズムがどこにあるのかよく分かる選集にしかならないと感じました。ので、掲載しておりません。
また、()内には抜粋された本の題名を明記しております。気になった方は、この機会に紐解いてみてはいかがでしょうか?

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★体験が人間にとって何よりの修養だということも言われるが、これも当てにならない。むしろ書物や体験をたえず片端から切り払い切り払いするところに人の真実が研(みが)かれる。(改造社版「徳田秋声集」序詞)

★大して花やかな夢はもたなかったにしても、分に相応した経済生活の安定とか、世間並みな夫婦愛の幸福とかいうようなものはひそかに期待していた。(「勲章」)

★どんな美しい庭園や住居にも、裏にはきっと汚い部分があると同じに、どんな秀麗な明媚な山水でも、ちかよってみればきっと小汚い雑木や雑草の生茂(おいしげ)った部分が、その下地となって裾を引いているのである。(「雑草」)

★風物の微妙な感じは、冬なら冬、夏なら夏が、静かに春や秋と入れかわろうとしている時に、最も人を楽しませも、傷(いた)ませもする。(「秋立つ頃」)

★何ごともすべて小器用に易々と為遂(しと)げられているこの商工業の都会では、精神的には衰退しつつあるのでなければ幸いだというような気がした。(「蒼白い月」)

★好きな草花を見ても、来年の今ごろにならないと、同じような花が咲かないのだと思うと、それを待つ心持が寂しかった。(「風呂桶」)

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★「男が女に惚れると、馬鹿なことをするものですね」(「死に親しむ」)

★貞淑なる女必ずしも貞淑ならず、不貞なる女必ずしも不貞ならず、唯機会のみ。(安成二郎著「女と悪魔」の「序にかえて」)

★子供の運命が自身の寿命と生活力の届かないところへはみ出すことは、誰しも苦痛であった。母性愛はそれに比べると動物的なものらしいのであった。(「チビの魂」)

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★「どうせ長持ちのしない身上だもの。今のうち好きなことをしておいた方が、こっちの得さ」(「あらくれ」)

★「金の世の中ですよ。いくら恋愛だ何だ言ったって、あの連中だってやはり金が欲しいんですよ。……金がなかった日にゃ、恋愛もはあ屁ったくれもあったもんじゃないですよ」(「死に親しむ」)

★「あればもし、小さい自分の世界に閉じこもって、人の蔭口ばかり吐いているような井戸端会議式の女かありふれた淑女型の女だったら、僕は決してこんなに愛しはしないね」(「元の枝へ」)

★花(注ー花札遊び)には不分明な領界があるので、私のような頭のわるいものでも相当楽しむことがでけいる。もし花に不分明な領域がなかったら、私は嫌いになるだろう。人生も隅から隅までわかったら、私の利巧でない人間は生きていられないかもしれない。(「花その他」)

★「自分に子を持ってみると、世間の子供が目についてくるから不思議ですね」(「黴」)

★「どうしたって、女は十六、七から二十二、三までですね。色つやがまるでちがいますわ。男はさほどでもないけれど、女は年をとるとまったく駄目ね」(「燗」)

★「おれはまた親の悪口なぞ言う女は大嫌いだ」(「あらくれ」)

★「またいいこともある。悪いことばかりはないもんや」(「挿話」)

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★芸術には比較的孤独性に滲透したものと、普遍的なものとがある。個人性の強いものと、社会性の多いものとがある。今は社会性の多いものが期待されているようだが、しかも個人性を除外しては、芸術はほとんど成り立たないと言っていい。(『「ダマスクス」を読んで』)

★人にはそれぞれ稟質(ひんしつ)がある。才分がある。修養や陶冶(とうや)もまた全く不必要のことではないのみならず、大いに必要なのであろうが、いくら骨を折って書いたところで、資質以上に大きくなることは容易のことではない。(改造社版「徳田秋声集」著者の言葉)

★もともと芸術は学校なんかで教わるべき性質のものではないので、名人から名人へ吹きこまるべきものだろうと思う。(「浄瑠璃の三味線」)

★老年の不幸は、友人がなくなることと、死の近づくことだろうが、しかし大自然のなかに生きている寂しさを味わいつめたものには、それも大した悲しみではない。(「老境」)

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